-現在担当している業務を教えてください。

成年後見に関する全般的な業務や福祉相談業務です。以前は総合法務部で相続・遺産整理業務等を担当していました。

福祉と法律の橋渡し

-これまで、知的障がい者施設での生活・自立支援や自治体施設における相談支援専門員など、長きにわたり福祉に携わってこられたのですよね。福祉から法律の世界に足を踏み入れたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?

以前から、福祉と法律の橋渡しをしたいと考えていたからです。20代の頃に遡るのですが…実は立川には少し思い入れがあるんです。私が福祉と最初の関わりを持ったのは、大学生の時に立川養護学校で行った教職の実習です。この時に「障がいをお持ちの生徒さんが、本当は内面で物凄く沢山のことを考えていて、ただ、周りがそれを理解していないだけなのだ」ということに気づきました。初めての現場で、知的障がいをお持ちの利用者さんが私のために名札を作ってくださったのですが、それは今でも大切にしています。

-その時の気づきと法律とが、どのように交わったのでしょうか?

大学では法学部だったので、時間があれば時々裁判傍聴をしていました。教職で障がいのある方に触れてから、裁判の被告人に障がいをお持ちではないかと思われる方が多いことに段々と気がつきました。
例えば無銭飲食前科八犯の被告人が、法廷で国選弁護人から小言を言われ、検察官からさらに追及され、最後に裁判官から厳しい言葉が投げかけられる、そんな場面に出くわしましたが、明らかに被告人には中軽度の知的障がいがあるように感じられました。被告人が終始小さくうなだれている姿を見て、「これは何かがおかしい」と違和感を抱いたんです。そして、この光景が、ずっと胸の中にしこりとして残っていったのです。

それから数年後、山本譲司さんの「獄窓記」により刑務所内の沢山の障がい者の存在がクローズアップされるようになりました。この獄窓記を読み「あの違和感を抱いたのは自分だけではなかったんだ」と、胸のつかえが取れたような気持ちになったんです。そして問題の根底に、法律と福祉の距離が遠いためお互いにどうしたら良いかわからなくて困っている、私にはそんな風に見えたんです。
それならとにかく、法律を学んだ誰かが、福祉の世界へ飛び込まなければならない、そんな風に考えて福祉の門を叩きました。

-なるほど、福祉と法律の橋渡しというのはそういう意味だったんですね。

はい。福祉の世界に入ってからは、知的障がい・身体障がい・精神障がい・高齢者と一通り現場を経験しまして、そろそろ法律の世界に戻ろうと思い、入所したのがこの事務所です。

-橋渡しの場として成年後見という仕事、また司法書士事務所という職場を選んだのはどうしてですか?

現在、様々な分野・領域で福祉的視点の必要性や福祉との連携が必要になってきていますが、中でも成年後見制度は法律と福祉の連携が必要なモデルの代表的なものだと思います。福祉の現場に従事しながら10年ほど前から成年後見制度には注目しており、専門書等を読み込んできました。

また、もうすぐ到来する、未曾有の超高齢化社会への鍵は「地域」です。例えば国は2025年に向け地域包括ケアシステムを推進しています。私は、様々な職種が、連携して地域支援を行うにあたり、共通の行動理念としておそらく「権利擁護」というようなものに行き着くのではないかと考えています。そして、地域での権利擁護の中核を担うのは、司法書士法人ではないかと思っています。
それから、これまで福祉の現場では、成年後見人の司法書士さんと連携する機会が多かったため、今度は司法書士事務所に入り、内部で司法書士さんと連携してみたいという気持ちもありました。

感謝の社風と、多様性を認める風土

-大変に強い想いがあったのですね。現在の職場の様子や雰囲気はどうですか?

口先だけではない、感謝の社風があると感じています。感謝の気持ちを大切にするというのは、私自身も大事にしていることなので、居心地がいいです。

-周りに感謝する気持ちは大切ですよね。

これまで自治体の施設等で、一人で年間1000件程度の相談案件を処理してきました。約5000件以上の福祉相談を処理する中で見えてきたものもあります。それは生前にその人が集めたものは死後に四散するが、与えたり振る舞ったものはその人や遺族へ戻ってくるということです。ですから、私も、日々感謝をしながら、様々な人へ与え、配るような生き方をしたいと心掛けています。そういった私が共感する社風がここにはあります。

多様性を受け入れる社風も好きです。UNIBESTの「UNI」は、ユニーク、すなわち個性という意味ですが、これからもわかるように、多様性を認める風土がありますよね。ここには私を含めて様々なバックグラウンドを持つ人が集まり、お互いを尊重しながら力を合わせて仕事をしています。このような事務所は、他にはそう多くはないと思います。

-他にも印象に残っていることはありますか。

そうですね、入所したばかりの頃、山口会長から「今まで誰も考えつかなかったことや、だれもやらなかったことを、ここではやっていいんだよ」という言葉をかけてもらったことがあります。この会長の言葉も、多様性を大切にするこの事務所を象徴していると思いますし、またこの言葉をいただいて、自分の選択が間違っていなかったと思いました。

-日常の業務で気をつけていることはありますか?

相手にしっかりと寄り添うことを心がけています。「何かあったら相談に来てくださいね」という言葉だけの人に、人は相談しないんです。その人の元に足繁く通ったり、積極的に声掛けをしたり、こちらがちゃんと汗をかかなければいけません。でも、こちらが汗をかいた分だけ、相手は信頼というかたちできちんと返してくれる、そんな風に感じます。

福祉と法律の連携を目指して

-なるほど、素晴らしい心がけですね。社会福祉士でもあり行政書士でもあるわけですが、何か共通点などは感じますか?

「誰かの困りごとを一緒に解決する」という点で共通していると思います。立っている基盤が一緒といいますか。両者には親和性がありますね。

-福祉と法律の橋渡し役として、これからやってみたいことなどはありますか?

例えば認知症サポーター養成講座を企画するなど、所内に福祉的な視点や情報を届けられたら良いなと思っています。
それから、社会福祉士や精神保健福祉士は一般に福祉や精神医療の専門家と言われますが、実は相談それ自体を業務の目的とする特殊な国家資格でもあります。相談の専門家ということですね。士業も登記や遺産整理、事業承継などの目的のために手段として相談業務を行いますが、相談のスキル等も所内で共有できたら、面白いかなとも考えています。

-最後に、今後の抱負を聞かせてください。

生涯のうちで、福祉に関わらない人はいないんです。たとえ直接自分が関わらなくても、家族、友人、職場など間接的であれ必ず関わるのが福祉です。
私は、社会の中での勝ち負けや、躓き、マイノリティーであることが、その人やその家族の人生の終わりとなるような社会にはしたくないと思っています。そういった社会はぜい弱な社会ですよね。誰かの失敗や、少数派としての経験の中にこそ、わたしたちの社会にとって有益な糧があり、それらを受け入れることで社会はより強靭となります。強靭な社会は、辛く悲しい思いをする人をきっと減らしてくれます。
この考え方は、法律にも当てはまると思います。つまり、福祉も法律も、辛く悲しい思いをする人を減らすことができるんです。だから、この先も福祉と法律のいい連携を続けていきたいです。
事務所の皆さんから「事務所に社会福祉士がいてくれて、よかった」と言ってもらえるよう、今後も頑張りたいです。

-本日はありがとうございました。

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