家族信託のよくある質問

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家族信託のよくある質問

家族信託とは何ですか?

自らの持つ資産の管理や運用を、信頼する家族に託すことです。
託された家族は言いつけを守り、その資産を管理、運用していきます。

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家族信託ではどのようなことができるのですか?

託された人の側で(名義で)託された資産を管理運用したり、売却したり贈与したりすることができます。
資産を託した後に本人の判断能力が低下・喪失したとしても、本人の意思確認手続は本人に対して行われないため、資産が凍結されるリスクがなくなります。
また最終的に(本人が亡くなったら)、その資産を指定した人に承継させるといった遺言のようなことも可能になります。

家族信託を利用するにあたり、家族の承諾は必要ですか?

法律的には委託者と受託者以外の家族の同意は不要です。
(委託者と受託者の同意さえあれば、信託契約は成立します。受益者の合意も不要です)
しかし現実的には、親の財産管理や資産承継について、家族全員による理解・意識共有がなければ、スムーズな信託事務処理は難しいといえるでしょう。
そのため、家族信託の利用にあたっては、契約当事者以外の家族も含めた話し合いを行うことが望ましいといえます。

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どんなものが信託財産に組み込めるのですか?

法律上は、信託できる財産に特別の制限はありません。
ただし、家族信託は本格的に普及が始まってからまだ間もないこともあり、実務に対応できる銀行・証券会社などの金融機関がまだ少ない状況です。
そのため、信託可能な財産は、実際のところ「不動産」「現金」「未上場株式」に限られているのが現状です。
かつて成年後見制度の開始当初も対応可能な金融機関が少ないという問題がありましたが、現在ではその多くが対応しています。
家族信託も、今後のニーズの盛り上がりを受けて対応可能な金融機関が増えていくと思われます。

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家族信託を利用する場合の費用はいくらかかりますか?

それぞれのケースにより異なりますが、信託する財産のおおよそ1~2%前後です。
内訳としては、次のようになります。

①信託契約締結にかかるコンサルティング報酬
→家族信託契約の設計に関する、専門家への報酬です。

②公証役場の手数料
→信託契約公正証書作成のため、公証役場へ支払う手数料です。
 信託財産の価格に応じて算定されます。(数万円~数十万円)

③不動産登記にかかる登記手続報酬
→信託財産とされた不動産の登記手続を行う際の、司法書士への登記手続き報酬です。

④不動産登記にかかる登録免許税等
→不動産登記の際に必要となります。
 不動産の固定資産税評価額に対する0.4%が登録免許税となります。

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家族信託契約を締結するためには公正証書による契約が必要ですか?

法律的には必ずしも公正証書を用いる必要はありません。
しかし、公正証書で契約書を作成しておくことで原本紛失のリスクがなくなり、契約の有効性も担保されるため、家族信託契約の締結には公正証書を用いるべきです。

既に任意後見契約を締結していますが、家族信託を利用することはできるのですか?

できます。
成年後見人は本人に対する身上監護を行いますが、(身上監護とは、病院や介護保険、施設といったまさに「身の上」の手続を行うことです。)家族信託の受託者はこの身上監護ができません。
そこで両制度の利点を生かすことを目的として、成年後見と家族信託を併用することもあります。

既に遺言を書いているのですが、家族信託を利用することはできるのですか?

結論としては、家族信託の内容が遺言に優先します。
(遺言の効力は信託財産にはおよびません)
遺言は民法を根拠とし、家族信託は信託法という法律を根拠としています。
この点、民法は一般法、信託法は特別法という関係にあるのですが、一般法と特別法が抵触する場合には、特別法が優先されるためです。
ただし、家族信託契約で信託財産となっていない財産については、遺言に従うことになります。

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認知症になってから家族信託を利用することはできますか?

基本的にはできないものと考えてください。
家族信託には<家族間での約束ごと>といったイメージがあるかもしれませんが、その実体はあくまでも契約です。
契約を結ぶためには物事をきちんと理解する能力(「判断能力」「事理弁識能力」などといわれます)が必要となるため、判断能力のない人が結んだ契約は無効となります。
必ずしも「認知症=判断能力なし」ということではありませんが、実際にはほとんどのケースで判断能力は認められないものと思われます。
そのため、ご本人が元気なうちに家族信託契約を結んでおくことが大切です。

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家族信託を使わないほうがよいこともあるのですか?

節税対策や相続税対策を目的とした方には、家族信託は向いていないといえます。
というのも、家族信託それ自体には税務的なメリットやデメリットがないからです。
(もちろん、信託契約後、受託者により節税・相続税対策がなされることはありますが、これらは家族信託そのものの効果ではありません)
家族信託はあくまでも生前の財産管理や資産承継といった、目的を達成するための手段であるという認識が重要です。

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家族信託については誰に相談すればよいですか?

家族信託の組成にあたっては、法務・税務面でのリスクをしっかりと検討する必要があります。
したがって、家族信託の理論・仕組をしっかりと学び、実践している法律専門家(弁護士・司法書士・行政書士等)に相談することをお勧めします。
税理士と連携している専門家であればより心強いといえます。
また家族信託は、次の世代、場合によってはその次の世代以降まで長く続いていくものです。
そのため、それぞれのケースに応じたオーダーメイド型で慎重に作成する必要があります。
この点、対応件数の多い専門家であれば、個々の要望に応じた最適な提案をしてくれるでしょう。

民事信託(家族信託)と商事信託(銀行信託)の違いは何ですか?

資産を持つ人が自らが信頼する人(家族・親族・知人等)に財産を託すのが民事信託、信託会社や信託銀行などのプロに財産を託すのが商事信託です。
民事信託の中でも、財産を託される人(受託者)が家族である信託方法を、特に家族信託と呼びます。
つまり、家族信託は民事信託の一部ということになります。
なお民事信託の場合、受託者は報酬を目的としないため(報酬を定めることも可能です)、信託業法という法律の制限を受けずに信託行為が行うことができます。
これに対し、商事信託は営利を目的とし報酬を受け取るため、信託業免許が必要となり、また信託業法の制限のもとで信託行為を行います。

家族信託を途中で変更することはできますか?

できます。
原則として、委託者・受託者・受益者の合意によることが必要ですが、信託契約締結時にこれと異なる変更方法を定めておくことも可能です。(信託法149条)

家族信託はどのようにして終了するのですか?

信託法上、複数の法定終了事由が規定されており(信託法163条など)、これら終了事由の発生をもって信託は終了となります。
なお、現実の組成に当たっては信託目的・家族関係・資産状況・承継方法といった、それぞれのケースに応じた具体的な終了原因を別途定めておくことが一般的です。

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受託者にはどういう義務が課されるのですか?

受託者による権利濫用を防止し、また受益者を保護するために、次のような義務が課せられています。

①善管注意義務
受託者は信託目的を実現するため、信託の目的に従い、善良なる管理者としての注意義務(※善管注意義務)をもって信託事務を処理しなければなりません。

※善管注意義務
業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などにいたった場合は民法上の過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。

②忠実義務
受託者は、法令および信託の目的に従い、受益者の利益のため忠実に信託事務を処理しなければなりません。
受益者と受託者との間において、利益が相反・競合する場合は、忠実義務の問題となり厳しく制限されます。

③分別管理義務
受託者は、信託財産と自らの固有財産を分別して管理しなければなりません。
原則としては、信託財産の種別に応じて分別管理の方法が定められています。
(例えば不動産であれば、信託財産である旨の登記が必要です)

④自己執行義務
受託者は、委託者からの信頼に基づき信託財産の管理・処分を託されているため、原則として信託事務を他人に代行させることができず、受託者自らが信託事務を遂行すべきとされています。
ただし、一定の場合には第三者への委託も認められています。

⑤公平義務
受託者は、受益者が2人以上ある信託の場合、それぞれ受益者のために公平にその職務を行わなければなりません。

⑥帳簿等の作成等、報告・保存の義務等
受託者は、信託財産に係る帳簿その他の書類を作成しなければなりません。

⑦損失てん補責任
受託者がその任務を怠ったことで信託財産に損失が生じた場合、または変更が生じた場合には、受託者は受益者の請求により損失のてん補または原状回復の責任を負います。

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受託者が亡くなった場合はどうなるのですか?

信託契約期間内に受託者が亡くなると、契約に特別の定めがない限りは新たな受託者を見つける必要が生じます。
すぐに次の受託者が見つかればよいですが、仮に受託者不在のまま1年が経過すると、強制的に信託契約は終了となってしまいます。
(信託法163条3号)
これを避けるため、実務的には予備の受託者(「第二受託者」といいます)を定めておくことが普通です。

受託者になる人は家族以外から選んでもいいのですか?

受託者につき信託法7条は、「信託は、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者としてすることができない。」と規定しています。
したがって、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人でなければ、家族以外の人を受託者とすることも可能です。
しかしながら、家族信託は信頼できる身近な家族、親族に思いを託すことにその意義があるといえます。
そういった意味では、やはり家族、親族を受託者とすることが理想的と言えます。
ただし、家族や親族に受託者のなり手がいなかったり、負担が重すぎるという場合には、司法書士や弁護士などの専門家に任せることも検討すべきでしょう。

受託者には複数の人間がなることはできるのですか?

受託者の人数につき信託法上の制限はありませんので、複数の人間を受託者に設定することは可能です。
ただし受託者が複数の場合、原則として信託事務は受託者の過半数の決定により行われることになるため、受託者間の意思が一致しないと、信託事務が滞ってしまうリスクもあります。

受託者には法人もなれるのですか?

法人も受託者になることができます。
受託者につき信託法7条は、「信託は、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者としてすることができない。」と規定しています。
これを反対解釈すると、これら以外の者であれば個人はもちろん、法人でも受託者になることは可能ということになります。

未成年者や判断能力のない知的障がい者・精神障がい者が受益者になることはできますか?

できます。
特定の者であれば、個人(年齢問わず)でも法人(形態問わず)でも受益者になることができます。
また胎児や、将来生まれるであろう、現在まだ存在していない子でも受益者とすることができます。

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受益者には複数の人間がなることができるのですか?

できます。
複数の受益者に同時に受益権を取得させるだけでなく、連続的・異時的に取得させることも可能です。

家族信託の締結後に、委託者が認知症になり判断能力が無くなるにいたりました。家族信託はどうなりますか?

契約締結と同時にその効力が発生する契約内容(通常はこの内容で契約を結びます)であれば、いったん信託契約が成立すると、受託者による信託事務が行われるようになります。
そのため、家族信託契約は委託者の判断能力に影響を受けません。
これに対して、「ひとまず契約は締結するが、今はまだ親が元気なので、親の判断能力が低下した時点で契約の効力を発動させたい」といった契約内容であれば、注意が必要です。
なぜなら、実務上、親の判断能力低下について判断する基準があいまいとなるリスクがあるからです。
また、こういった契約内容では、成年後見の代用としての家族信託の意味が失われてしまうともいえます。
そのため、効力発動には特に条件などはつけず、契約締結と同時に効力を発生させる内容が望ましいといえます。

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受益者代理人とはなんですか?

受益者代理人とは、受益者が現に存在する場合に、受益者に代わって信託を管理する人です。
例えば受益者が多数いるケースや、頻繁に変動するといったケースでは、受益者の権利行使・意思決定がスムーズに行われず、受託者の信託事務に支障が出ることも考えられます。
こういった場合でも、受益者代理人に受益者の権利行使を集中させることで、信託事務の停滞を防ぎ、受益者の権利を守ることができるのです。

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信託監督人とはなんですか?

信託監督人とは、受益者が現に存在する場合に、受益者のために受託者を監督(受託者が正しく信託事務を行っているかどうか)する人です。
本来、受託者の監督は受益者自身により行われるものですが、場合によっては受託者を監督する役割が必要なこともあります。

例えば、

・受益者が年少者や高齢者であるとき
 →受益者が受託者を監督することが困難だからです。
・受託者が重要な信託財産の処分行為を行うとき

 →受託者一人の判断に任せると受益者が思わぬ不利益を被るリスクがあるため、専門家や第三者などのチェックを踏まえたうえでの処分が望ましいからです。

こういったケースを想定して制度化されたものが信託監督人です。
一般的に信託監督人には、司法書士などの法律専門家を選任します。

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信託事務処理代行者とはなんですか?

信託事務処理代行者とは、信託事務の処理を受託者から委託された人です。
家族信託は、委託者の受託者に対する信頼のうえに成り立っていることから、受託者が自ら信託事務を行うことが前提です。
しかしながら、信託事務の遂行には専門的な知識が必要なことも多く、分業化・専門化が進んだ現代社会において信託事務を受託者が一人で全て処理するということは、あまり現実的ではありません。
そこで、「契約の内容に、信託事務を委託することができる定めのあること」など一定の場合には、信託事務の処理を第三者(=信託事務処理代行者)に委託することができると規定されています。

不動産を家族信託に組み入れた場合、固定資産税の支払いは誰が行うのですか?

受託者に課税されます。
固定資産税は不動産の名義人に課税される決まりですが、家族信託により名義が委託者から受託者に移るため、信託契約締結後の固定資産税の納税義務者は名義人である受託者に課税されるということになるのです。
ただし実務上は、信託財産に関する費用として信託財産の中から受託者が支払うという契約にすることが一般的です。
そのため、実質的には受益者が負担することになります。

家族信託を締結した後、信託のことで税務署に提出する書類等はあるのですか?

贈与や相続といった一定の事由が発生した場合に、受託者は翌月末日までに税務署に「信託に関する受益者別調書および合計表」を提出する必要があります。
また、信託財産にかかる収益の額の合計が3万円以上の場合、受託者は翌年1月31日までに「信託の計算書およびその合計表」を税務署に提出しなければなりません。
なお税務署への提出書類ではありませんが、受託者は「帳簿および計算書類」を作成し、受益者に報告しなくてはなりません。

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