家族信託と成年後見の違い① -内容-【おしえて!家族信託相談室-第5回】

成年後見はデメリットが多い?

・口座が凍結されたら成年後見人をつけないと預金はおろせない。
・だけど、預金をおろしたらそれで終わりではなく、成年後見は一生続いて
 その間は最低でも年間24万円ぐらいの費用がかかる。
・不動産の売却なども難しくなる。

これまでのお話をまとめると、こういうことですよね。
そうすると、預金を引出すためだけに成年後見を利用するというのは、
あまりいい選択とはいえないのかしら?
だからといって、成年後見人がいなければ何もできないし、
他にいい方法はないんですか?

はい。
「家族信託」※という制度を利用することで、
これまでにお伝えした成年後見の問題を解決することができるんです。
※「家族信託」は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です

家族信託?また新しい言葉が出てきたわね。

信託って?

信託のイメージについては、下図を見てください。
信託は、文字通り「信じて託す」ということなんです。
①資産を持つ人(A)が、自分が信頼できると思う人(B)に資産を託す
②託された人(B)は、定められた目的に沿ったかたちで
 その資産の管理や処分を行う
③その資産から生じた利益は
 資産を託した人(A)の指定した人(C)が受け取る

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この信託の仕組みの中で、
資産を託される人(Bにあたる人)の役割を家族や親族が務めるものを、
「家族信託」といいます※2。
そのため、家族信託は「家族の家族による家族のための信託」
説明されることもあります。
下の図は、トラスト家で仮に家族信託を利用した場合のイメージです。
※2これに対し、Bの役割を信託銀行等が務める信託は「商事信託」と呼ばれます

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家族信託のイメージはなんとなくつかめたけど、
これでなぜ成年後見制度の問題が解決できるの?

内容を自由に決めることができる

家族信託の特徴は
「財産の管理や活用の方法を自由に決められる」
ということです。
家族信託は託す人と託される人の契約なのですが、
この契約に盛り込む内容には基本的に制限がありません。
そのため、生前贈与や積極的な財産運用など、
成年後見では難しかったことも
事前に契約を結んでおくことで可能となるのです。

後見と比べていろいろなことができるというのは魅力的ね。
でも、いくら自由に決められるとはいっても、
やっぱり認知症になったら制限はあるだろうし、
裁判所の許可も要るんでしょ?

認知症になっても大丈夫。裁判所の許可も要らない

いえ、契約の内容は託される人の判断によって行うことができるので、
仮に本人が認知症になったとしても問題なく行うことができます。
また、裁判所の許可は要りませんし、成年後見人をつける必要もないんです
これにより、以前お話しした
「①本人保護のための厳格な運用による不都合」
を回避できるのです。

成年後見とはまったく違うのね。
そういえばさっきから何度か出てくる「契約」だけど、
具体的にはどういうことを決めるの?

信託契約で定めること

家族信託の契約では、次のようなことを決めます。

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例えば、預金口座の凍結に備えた家族信託をトラスト家にあてはめると、
下図のようなイメージになります(一部簡略化しています)。
家族信託で準備をしておけば、仮にお父様が認知症になった場合でも
頼子さんの判断で預金を引き出すことができる
んです。
また、繰り返しになりますが、成年後見人をつける必要はなく、
裁判所の許可もいりません。

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なるほど、何だかメリットの多い仕組みのように思えてきたわね…。
でも、家族信託を利用するのにはどのくらいの費用がかかるのかしら?
成年後見は毎年結構な金額が必要だったけど、そのあたりも気になります。

今回のまとめ

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次回は家族信託の費用などについて説明します!

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また、一部内容を簡略化しております。