家族信託の注意点【おしえて!家族信託相談室-第9回】

家族信託の注意点

■サポートさん(とポチ)がトラスト家を訪ねてから、かなりの時間が経っていました。
気がつけば外はもう暗くなりつつあります。

家族信託にはメリットがたくさんあることはわかったけど、
デメリットはないのかしら?

基本的にデメリットというものはないと思っていただいて構いません。
ただし、家族信託を利用するにあたっての注意点はいくつかありますので、
今日は最後にこちらをお伝えしたいと思います。

財産管理を任せられる人が必要

まず「家族」信託という言葉のとおり、
前提として家族の中に信頼して財産を託すことのできる人が必要です。

もし家族にそういう人がいなければ、家族信託は使えないの?

いえ、使えないということではありません。
家族信託は「民事信託」という営利を目的としない信託方法のうち、
受託者を家族にしている点をとらえた呼び名なので、
必ずしも家族の誰かが受託者になる必要はないんです。

そのため、「民事信託」として
例えば友人など家族以外の人を受託者にすることも可能です。
ただ、実際にこのような人を見つけられるかどうかは、
なかなか難しい問題かもしれませんね。
こういった場合は、信託銀行など別の方法も検討してみてもいいかもしれません。

認知症になる前に家族信託契約をしなければならない

認知症になってからでは、基本的に法律行為ができません。
家族信託契約も法律行為なので、
委託者が認知症になる前に行っておく必要があります。
認知症になったあとで家族信託を利用しようとしてもほぼ不可能
と考えていただければと思います。

家族信託に対応していない金融機関がある

これは前回も簡単にお伝えしましたが、
信託専用の口座が開設できない金融機関もあります
どの銀行でも家族信託を利用できるということではありませんので、
場合によっては金融機関を変更する必要もあります。

身上監護権がない

家族信託の受託者は次のことができません。
・本人に代わって住居の確保や施設への入退所手続をする
・本人に代わって介護サービスの申込みをする

これに対して、成年後見人であればこれらの行為ができます。
ただし、実際には配偶者や子などの家族であれば
本人の代わりに手続ができる場合もあるので、
事前に施設等へ確認されることをお勧めします。

当事者を長く拘束する

ここまでの説明では詳しく触れていませんが、
家族信託には遺言に似た機能もあり、
次の世代、その次の世代まで委託者の意思を遺していくことができます。

しかし、これは裏を返すと当事者を長きに渡り拘束するということです。
そのため、家族信託の利用にあたっては
長期的な視点でバランスの取れた内容を考える必要
があります。

節税にはならない

家族信託はそれ自体が節税の効果をもつことはありません。
ただし、信託契約の中に節税につながる内容(遊休資産の活用権限など)を
設定しておくことで、節税対策を行うことはできます。

損益通算ができない

収益物件を信託財産にした場合、
その物件から生じた損失(マイナス)は、
他の所得と合算することができません。

どういうこと?

例えば、ジョンさんがAとBの2棟のアパートを持っていたとします。
ここで、Aからは収益があったものの、
Bは大規模修繕などで損失が上回ったような場合、
どちらもジョンさんの自己所有物件(信託財産でない)であれば、
Bから生じた損失をAの収益と合算することができます。
つまり、Aの収益はBの損失の影響を受けて減ることになり、
結果として、ジョンさんにかかる所得税の課税対象額は減ることになります。
これを損益通算といいます。

これに対して、もしBのアパートを信託していたとすると、
損益通算をすることができません。
つまり、Bから損失が生じていても、
ジョンさんはその損失をAの収益と合算して
所得税の課税対象額を減らすことができないのです。
また、信託契約を複数に分けた場合、
信託契約をまたいでの損益通算はできません。
このようなことから、家族信託の利用にあたっては、
税務的な観点からの検討も不可欠です。

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なるほど。
家族信託を使うことで何かがマイナスになったり
特別不都合が生じる、ということではないんですね。

そうですね。
そのため、はじめにもお伝えしたように、
デメリットというよりは注意すべき点ということになります。
こういった注意点にだけ気をつけていただければ、
家族信託は将来の財産管理や運用において
とても大きな役割を果たすことができます

今日は長い時間ありがとうございました。
家族信託、みんなで考えてみたいと思います。

こちらこそありがとうございました。
今日はお伝えできませんでしたが、
家族信託には認知症対策以外の使い方もあるので、
またいつかお話しさせてください。

今回のまとめ

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次回からは、家族信託の色々な使い方を紹介していきます!

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また、一部内容を簡略化しております。