認知症と口座凍結【おしえて!家族信託相談室-第1回】

家族信託相談室、始まります。

「家族信託って?」「どんな時に使うの?」「メリット・デメリットは?」
最近耳にすることが増えてきた家族信託。
UNIBESTの公式(?)キャラクター「サポートさん」が、家族信託に関する様々な疑問・質問に答えていきます。

第1回:認知症と口座凍結

■都内某所にある、トラスト家。隣町に住む長女の頼子が買い物帰りに実家に立ち寄り、母の信子と話をしています。

お母さん、元気?何か変わったことはない?

最近急に寒くなってきたせいか、くしゃみと鼻水がひどくてねー。
それよりも、ちょっと気になることがあるの。

何かあったの?

お父さんのことなんだけどね。最近急にもの忘れが多くなってきたというか…。
もともと、おでこに乗せたメガネを探すような抜けたところのある人だったけど、
近頃たて続けにカギと財布をなくしちゃってね…。
ひょっとして、認知症の初期症状じゃないのかな、って心配なの。

それは心配ね…。年齢とともにもの忘れは多くなるかもしれないけど…。
気になるようなら一度病院で診てもらったほうがいいのかしら。
そう言えば、ウチのお隣のおじいさんが認知症になってそこの奥さんが
「お義父さんの銀行口座がトウケツされて大変だったのよ」って言ってたわね。

口座の「トウケツ」?どういうこと?

私も詳しくはわからないけど、おじいさんが施設に入ることになって、
その費用をおじいさんの預金でまかなおうとしたら、
銀行から「お金は引出せません」と言われてしまったみたい。

認知症だとお金をおろせなくなるの?なぜかしら。
でも、もしそれが本当なら大変ね…。

その時に銀行からは
セイネンコウケンニンをつけないと、預金をおろすことはできない」
って言われんたんだって。

「トウケツ」やら「セイネンコウケンニン」やら、難しい単語ばっかりねー。
大変そうだってのはなんとなくわかったけど…

今日はお父さんどこに行ってるの?

ゴルフ練習場。最近ドライバーを買い替えたのよ。
そしたら「人生最高のクラブに出会った!」って言って、
毎日のように通ってるの。

そうなんだ。なら、心配ないのかな…。

■帰り道、頼子は一人考え込んでいました。

お父さん、大丈夫かしら…。ただのうっかりならいいんだけど。
でもお隣のおじいさんの話もあるし。もし認知症になってしまったら、
「セイネンコウケンニン」ってのを使えばいいの?
何かその前にできることはあるのかしら…。

認知症は事前に対策をしておくことができますよ!

え?事前に対策??ってあなた犬?
なんで普通にしゃべってるの?

細かいことにこだわってはいけません!
今や犬も猫もしゃべるご時世ですよ。
ほら、テレビCMとか。まあそれはいいんです。
お父さんの認知症対策を考えているんですよね?

(細かくはないと思う…)ええ…。
でも認知症って診断を受けたわけでもないし、
今はまだ大丈夫だと思うんだけど。
ただ、お隣さんが色々苦労したみたいだから、もしもの場合に備えて、
何か準備できることがあればしておきたいなあ、って…。

なるほど!
僕のご主人様、そういう話めっちゃ詳しいんです。
色々とご説明しますよ!もちろんタダで!

(この犬グイグイ来るわね)え…そうなの?
んー、まあ、ここで会ったのも何かの縁かもしれないし。
じゃあ、お願いしようかしら…。

■数日後、トラスト家にポチの飼い主のサポートさんが訪れました。

はじめまして。今日はよろしくお願いします。

口座の凍結って?

今日はわざわざありがとうございます。
万が一父親が認知症になった場合に備えて、色々と聞いておきたいことがあるんです。
さっそくなんですが、銀行口座の「トウケツ」ってどういうことなんでしょうか?
お隣のおじいさんが認知症になった際に口座が「トウケツ」されて大変だった、と聞いたので…。

銀行口座の凍結ですね。
凍結とは、文字通り銀行口座が固まり、動かせなくなってしまうことです。
具体的には、預金の引出し・口座引落し・解約などが一切できなくなること
を意味しています。

一切できなくなってしまうの!?
それはお隣さんも大変だったはずだわ…

どうして銀行は口座を凍結するの?

でも、銀行はどうして口座を凍結するの?

少し難しい話になりますが、「判断能力が失われてしまった」からです。
一般的に認知症の方は、自分自身で何かを決めて行う能力、
つまり「判断能力」がないとされます。
この判断能力がなくなると、法律行為ができなくなってしまうんです。
法律的に言うと、
「判断能力のない者が行った法律行為は無効になる」ということなんです。

判断能力に法律行為…むずかしいわね…。

みなさんが日ごろ何気なく行っている預金の引出しや解約は、
さきほど説明した「法律行為」にあたるんです。
つまり、
①「認知症になると法律行為が無効になる」
②「預金の引出しは法律行為である」
「だから認知症になると預金引出しはできない」
という論理になるんです。
つまり銀行としては、無効になるような預金の引出しを行うわけにはいかないんですね。

うーん、なんとなくわかるような…

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また「本人保護」という観点からも説明することができます。
判断能力がない方の口座から本人以外が引出しを行うことは危険なので、
本人の財産を守るための手段として口座を凍結するのです。

さらには、口座の不正利用や詐欺、親族間のトラブルを防止するため、
ということも凍結の理由といえます。

でも、銀行はいつ本人が認知症になったことを知るのかしら?

あくまでもケースバイケースですが、本人が窓口に赴いた際に発覚したとか、
施設への入所費用などについてご家族が窓口に相談にいったときに判明した、
といったケースなどがあるようです。

家族でもおろせない?

妻や子どもでも引出しはできないのかしら。

はい、たとえご家族であってもできません。
最近では金融機関における本人確認が厳しくなってきているので、
ご家族が通帳と印鑑を窓口に持っていっても、引出すことはできないんです。

介護費用とか、施設への入所費用だとしても?

残念ながら、理由のいかんにかかわらず認められないと考えてください。

お父さんの口座の暗証番号を知っているんだけど…。
ちょっとお父さんの様子が危ないかな、って思ったときに、
凍結前にキャッシュカードで引出すこともできないの?

預金の引出しが確実に本人の同意に基づくものであって、
かつそれを明らかにできるのであればともかく、
その時点で本人の判断能力に問題があった場合などには
トラブルのもとになりかねないので、おすすめはできません。

預金引出し以外にもできなくなることが?

口座の凍結って想像以上に大変なのね…。

そうなんです。
口座の名義人が亡くなった場合に
その口座が凍結されるということはご存知の方も多いのですが、
認知症で凍結されるということは、あまり知られていないかもしれないですね。

さらにいうと、預金の引出し以外にもできなくなってしまうことがあります。
典型的なのは不動産の売却ですね。
例えば、今後の入院費や介護費を捻出するために土地を売ろうとしても、
さきほどの「認知症になると法律行為ができない」というルールにより、
売ることができなくなってしまうんです。

そうか…。そうすると、家族が認知症になって急にお金が必要になったとしても、
何もできなくなってしまうの?

認知症になってしまったら、成年後見を利用すれば安心?

いえ、その場合には成年後見制度を利用することで、
本人のお金を引出したり、不動産の売却ができるようになります。
(一定の制限はあります)

あ、お隣さんが銀行から言われたったいう、成年後見ね!
ということは、成年後見を使えば、認知症になっても結局は安心なのね?

いえ、実は成年後見を利用したとしても、
それだけで安心とは必ずしもいえないのです。

え?そうなの?

今回のまとめ

認知症による銀行口座の凍結とは、
本人の判断能力低下を理由に、
預金の引出し・口座引落し・解約などができなくなってしまうこと
をいいます!

初回なので、ものすごーく長くなってしまいました!
次は成年後見制度について説明していきます!

なお家族信託の概要は下記動画でもご案内していますので、
ぜひご覧ください!

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また、一部内容を簡略化しております。