補助者受験生、初決済までの道【第28話・定額小為替ばくだん】            ~戸籍謄本と定額小為替~

おはよう。ぶぇっくし!!
さっそくだけど、今日は相続登記のために戸籍の証明書……いわゆる戸籍謄本を集めてほしいんだ。

もう花粉が飛び始めているみたいですね。
そして今回の案件は……母親が亡くなって、その娘たち4人が相続人ですか。

お客様から聞いた限りではね。ぶぇっくし!!
それでも、知らないところで母親が誰かと養子縁組していたりする可能性がゼロではない。
戸籍謄本を集める作業は、そのあたりを確認して法律上(戸籍上)の相続人を確定させるためにするんだよ。

遺産分割協議は法定相続人全員が参加していなければ無効になるから、もし後から他の相続人がいると分かったら大変ですもんね。
それに戸籍謄本は結局、相続手続きのなかで銀行や法務局に提出することになりますし。

その通り。
それで、今回亡くなったこの母親は、実家がある青森のほうにも戸籍があるらしい。
青森の市役所に行くためだけに新幹線に乗るわけにもいかないから、そこの戸籍は郵送請求で取ることにしようか。

郵送請求ですか……
前から疑問に思っていたんですけど、郵送請求のときに封筒に入れて送る、この定額小為替(ていがくこがわせ)っていったい何なんですか?

郵便局が取り扱っている送金サービスの一種だよ。
こちらが郵便局で買った定額小為替を送って、それを受け取った人が近くの郵便局に持っていけば同額の現金を払い戻してもらえる。
つまり結果的には郵便局を介してお金を送ったことになるんだ。

知ってのとおり、1000円や750円、50円などの決まった金額を1枚の単位として売られているから定額小為替と呼ぶんだね。現金そのものではないから、現金書留じゃなくても送ることができるんだ。
ちなみに郵便局で買う時には、一律200円の手数料を支払う必要があるよ。

一律200円って……50円分の定額小為替を買うのに250円も支払う必要があるってことですか。
なんだかそんなのバカらしいですし……それだと全部1000円で買うのが一番お得ってことになりませんか?

まぁそういうことになるね。
戸籍謄本の発行手数料は450円や750円だから、たまに役所からは「おつりを用意しなくちゃいけないから1000円で送らないでください!」って言われるんだけど……難しいところだよね。

そうですね……
あと定額小為替って有効期限があって、その管理も大変じゃないですか?
この前も市役所に送ったら「期限が切れてるから送り直してください」って電話が来て……

たしかに定額小為替は転々流通するから、うっかり6ヶ月の期限が切れたものを送ってしまうこともあるよね。
利用者と役所の間で渡しあって、6ヶ月の期限切れの時に持っているのは誰か……さながら爆弾ゲームだ。

まぁでも、もし期限が切れたとしても、郵便局に持っていけば同額の現金に払い戻しをしてもらえるからね。
爆弾ゲームみたいにボカン!と爆発して、その時に持っていた人が損をするわけではないよ。

そうだったんですね。
あまりよく知らないまま定額小為替を使っていたので……この機会に知れて良かったです!
本当に戸籍って、読み方だけじゃなく集め方から独特な制度ですよね。

たしかに。
古い戸籍だと手書きの文字があまりに達筆だったり、旧字で書かれていたりで、収集作業はもはや暗号解読の域だよね。
司法書士は職務上請求書を使えば比較的簡単に戸籍謄本を取れるから、まだ楽な方ではあるんだけど。

私もひとりで戸籍を解読できるようになるまで、1年くらいかかりました……
身内に相続が発生したからと言って、一般の方がいきなり自分で戸籍謄本を集めるのは難しいケースも多いと思います。

そういう時のための専門家だからね。
でも、実は去年の3月から広域交付制度が始まって、一般の方でも戸籍謄本を集めやすくなったんだよ。

たとえば以前は、立川市役所で「他界した母親の戸籍謄本を全てください」とお願いしても、立川市に本籍地があるぶんの戸籍謄本しか出してもらえなかった。
もし結婚前の戸籍が青森市にあっても、それは別途、青森市役所に請求しなきゃいけなかったんだ。

そもそもまず青森市に戸籍があること自体も、一般の方が自力で読み解かなくちゃいけないですよね。

うん。
でも戸籍謄本の広域交付制度を使えば、立川市役所の職員さんが青森に戸籍があることまで調べて、そこの戸籍謄本もまとめて発行してくれるようになったんだ。

すごく便利な制度じゃないですか!
……あれ?じゃあ私も、今回はその広域交付制度を使えばいいんじゃないですか?

残念ながら代理人による請求では使えないから、司法書士がこの制度を利用することはできないよ。
だから場合によっては、お客様に広域交付制度を使って自分で取ってもらった方が早いケースだって当然ある。

でも、この制度で取れる戸籍の範囲にも制限があって、たとえば兄弟姉妹の結婚後の戸籍はこの制度じゃ追えないんだ。
だからそういう場合は今まで通り、こうして司法書士が職務上請求で……

職務上請求で……?

ふぇ……ふぇ……

マズイ!爆発する!
おひる食べに行ってきますねー!

いってらっぶぇっくしょッハァァイ!!!!


「富士見町にある「cafeばくだん畑」さんの「デミグラスソースがけオムライス

ふぅ……危ないところだった。