補助者受験生、初決済までの道【第20話・印鑑届出インドカレー】            ~印鑑証明書と印鑑登録証明書の違い~

これで……よし。
ウーバーイーデ株式会社」の設立登記申請を……
送信!……っと。

おお!ついにですね!
たしか会社の設立日は設立登記の申請日だから、今日が設立日になるんですよね。

そうそう。
設立日がいつになるかというのは会社にとって大事なことだから、大安のような縁起の良い日が事前に指定されることが多い。
でも1月1日や土日祝日は法務局が閉まっているから要注意だよ。

法務局が閉まっている間は登記申請が届かないからね。
開庁日の中で希望日を聞いて、当日に申請できるよう体調管理には気を付けないと……

なるほど……だから昨日は珍しく、味の薄いものを食べていたんですか?

そうなんだよ!
無事に登記申請ができたから、今日はガツンとスパイスの効いたものでも食べようかな。

すっかり寒くなりましたし、スパイスで温まるのもいいですね~
ところで登記用の書類のなかにある、この「印鑑カード交付申請書」って何ですか?

それは法務局に出すと、登記の完了と同時に「印鑑カード」を交付してもらえるんだ。
印鑑カードは、会社の代表者が印鑑証明書を取得するために使うものだよ。

印鑑証明書……ああ!遺産分割協議書と一緒に使うやつですね!

いや。それは印鑑登録証明書だよ。
不動産登記と商業登記がごちゃまぜになっているようだね。

印鑑証明書印鑑登録証明書……って別物だったんですか!?

名前がほぼ同じだからややこしいよね。
ひとつずつ、不動産登記の話から復習していこうか。

まず、不動産登記でよく使うのは印鑑登録証明書のほう。
これはいわゆる個人の実印について、市区町村が発行するものだ。
たとえば土地の売主なら、売主本人であることを証明するために使う。

市区町村にその実印が「登録」されていることを証明するから、印鑑「登録」証明書ですね。

それに対して印鑑証明書は、登記所に届出がされた会社の代表者等の届出印についての証明書なんだ。
ちゃんと会社の代表者が契約書に押印しました、ということを証明するために使ったりするよ。

つまり市区町村登記所か、個人の実印代表者の届出印か、という違いですか……
今回は会社の設立だから、会社の代表者としての印鑑証明書のほうってことですね。

そうそう。そこに「印鑑届出書」って紙もあるでしょ?
設立登記→印鑑届出→印鑑カード交付申請の流れを、この設立のタイミングで一気にやってしまうってことだよ。

印鑑届出は少し前から任意になったけど、会社を設立して活動をしていくと印鑑証明書が必要になる場面が何度もやってくる。
設立後に会社の銀行口座(法人口座)を作ろうとしたら、さっそく提出を求められるし。

なるほど……一応任意ではあるけど、印鑑届出は実質ほぼ必須ってことですね。
個人の実印のほうも、登録は必須なんですか?

いや。実印の登録は必須ではないし、むしろ必要な時以外は廃止しておくことが望ましいといえるかな

もし実印が盗まれたり、親族に勝手に使われたとしても、印鑑登録がされていなければ印鑑登録証明書とセットで使われることはない
つまり最悪の事態を防ぐことができるんだ。

たしかに……そういえば私もよく考えたら、まだ実印の登録はしたことがなかったです。

でもそれって逆に、もし親族の遺産分割協議書にハンコを押すようなことになれば、そのためだけにわざわざ印鑑登録をしなくちゃいけないってことですか?

うん、そればっかりは仕方ないからね。
スムーズに実印を押してもらえるよう、他の相続人との間で手間賃としてハンコ代というお金が授受されることもあるよ。

他にも……相続分が減ることを甘受してもらうための解決金としてのハンコ代というものもあるけど、もちろん何でもお金を渡せばいいってもんじゃない。

あくまで交渉材料の一つという程度の位置付けですかね……
難しい話になってきました!

うん。それじゃあそろそろ満を持してランチに行こうか。
オヒル代は出るから安心してね。


レインボウスパイス」さんの「ランチタイムダブルカリー(ネイコーリー/野菜)

インドカレーといえば……
たとえばインドに住んでいる日本人が相続人になった時、印鑑登録証明書はどうするんですか?
外国だから登録する市区町村がないですよね?

いい着眼点だね。国によって違うけれど、代わりに大使館などで作成してもらう署名証明書(サイン証明書)で対応する事が多いかな。

こういう話は渉外登記(しょうがいとうき)といってね……
これまた深い世界が君を待っている……

[受験生メモ]
・義務者が法人の場合の印鑑証明書……会社法人等番号を提供すれば、添付を省略できるようになった(法務省民二第318号令和2年3月30日通達)