補助者受験生、初決済までの道【第23話・餅と持分】            ~所有不動産の調べ方~

新年あけましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

よろしくお願いします~
今日はわざわざ家まで来てもらってごめんなさいね。

いえいえ。
お母様の介護があると、外出するタイミングもなかなか難しいですよね。
……ところであそこにあるのは、「立川伊勢屋」さんの鏡餅ですか?

すごい!そうですよ大当たり~!

事務所の近くにお店があるんですよ。
私もこの正月休みで、伊勢屋さんのお餅を20個は食べましたからね。

年末よりひと回りふくよかになってるのはそういうことだったんですか……

お母さんもお餅が大好きなんですけど、お昼に食べ過ぎたせいでまだちょっと寝ていまして。

構いませんよ。
先にお話だけお伺いしましょうか。
今回はお父さまがお亡くなりになって、その相続登記をご検討中なんですよね。

はい。
相続登記の義務化で、3年以内にやらなきゃいけなくなったと聞いて……
この実家の土地と建物がお父さんの名義のままなので、登記をお願いしてもいいですか?

もちろんでございます。
ですが今日おじゃました感じ、おそらく家の前の私道持分もありそうですね。

しどう……もち?

もちです。

もちもち~

もちもち~

た、たしかにこの家は大通りから少し入ったところにありますもんね。
公道ではなく私道に面している家の所有者は、その私道の共有持分を有していることが多いんですよ。

共有持分……でも持分って「2分の1」とかのことですよね?
完全に自分のものじゃないのに、道路を通っちゃってもよかったんですか?

はい。共有者はその持分に応じて、不動産の全部を使うことができますから。
なので極端な話、1億分の1でも共有持分があれば、その道路の全部を通ることができます。

えー!そうなんですか!
……まあでも逆に、半分しか権利がないんだから道路の右車線しか走るな!なんて言われても困りますもんね~

ええ。
亡くなった方が所有していた不動産を調べる方法はいくつかありますが……私道持分についての権利証や、毎年4月頃に届く固定資産税の納税通知書はございますか?

どうだったかしら、遺品を整理したけど権利証は無かったかな……
固定資産税の納税通知書は……お父さんそういうのすぐ捨てちゃう人だったからな~

権利証は相続登記自体には基本使いませんが、固定資産税の納税通知書評価証明書の代わりとして登記で使えますからね。毎年届いたら保管しておくのがオススメです。

権利証も納税通知書も無かった場合、他に調べる方法ってあるんですか?

もちろんあるよ。
自宅不動産の謄本を取って、そこの共同担保目録を見てみるとか。

なるほど!
自宅を担保にローンを組んだなら、私道持分も一緒に担保に入っているはずですもんね!

他にも、役所で名寄帳(なよせちょう)を取ってみるという方法がある。
名寄帳はその名の通り前でせる、つまりその人がその自治体内で持っている不動産の一覧が載った書類だよ。

そんな便利なものがあるんですか!
じゃあ名寄帳さえ取っちゃえば安心ですね~

と、思いたいところですが、役所によっては名寄帳に非課税の不動産を載せない所もあるので、完全に把握できるとは限りません。
これは納税通知書も同様です。
そして何より……

「その自治体内で」ってことは、別の市区町村で所有している不動産は分からないということですね。
全部の自治体で名寄帳を取る……なんて到底不可能ですし。

その通り。
だからせいぜい、生前に不動産を持っていそうな自治体にアタリをつけて名寄帳を請求するのが精一杯ですかね。

つまり……もし予想だにしない遠方の地に不動産を持っていたり、そもそも名寄帳にも載らないような不動産だったら見つけようがないってことですか。
納税通知書も名寄帳も、万能ではないんですね~

ええ。
しかし法務局も相続登記の漏れをなくしたいので、亡くなった方が登記簿上所有者として登録されている全国の不動産を一括で確認できる所有不動産記録証明制度が2026年2月から始まることになっています。

逆に今までそういう制度が無かったのが、個人的には驚きですね。

お父さんが他にも不動産を持っていなかったか、ちょっと聞いてみますね。
お母さーん!いい加減に起きてこっちの部屋に来てー!

ふがっ……お餅焼けたんけ~?

お餅はさっき30個食べたでしょー?
司法書士さんが来てるのー!

一食だけでお餅を30個も!?

ま、負けた……?

[受験生メモ]
・各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。(民法249条1項)
・東京23区の場合、役所ではなく都税事務所で名寄帳を取得する。