受益者連続型信託③-注意点-【おしえて!家族信託相談室-第13回】

すでに遺言を書いていた場合は?

受益者連続型信託は遺言に代わる機能があるとのことですが、
すでに遺言を書いていた場合にはどうなるのかしら?

結論としては、家族信託の内容が遺言に優先します。

というのも、遺言は「民法」を根拠とし、
家族信託は「信託法」という法律を根拠としているのですが、
民法は一般法、信託法は特別法という関係になっています。

このように、一般法と特別法が抵触する場合には特別法が優先されるため、
家族信託の内容が遺言に優先する、ということになるのです。

ただし、これは家族信託と遺言の内容が抵触した場合に限ります。
家族信託契約の中で信託財産となっていない財産について、
遺言に記載があればこの財産については遺言に従うことになります。

家族信託を利用しようとしたところ
「すでに遺言を作成していた」というケースは決して少なくありません。
したがって、このような場合には両者の整合性などを
しっかりと考える必要がありますね。

まだ産まれていない孫や曾孫も受益者に指定できる?

受益者連続型信託では世代を超えた承継先が指定できる
という話だったけど、
家族信託を始めた時点ではまだその世代が実際には存在していない、
ということもあるわよね。こんな場合は、どうやって引き継ぐの?

例えば我が家の場合、長女には子どもがいるけど、長男は独身です。
もし長男にも将来子どもができたとして、
その子に特定の財産を引き継がせたいと思っても、
現実にはまだ長男の子どもは産まれていないし…。

受益者連続型信託では受益者が現存している必要はないんです。
そのためまだ産まれていない孫や曾孫なども
受益者として定めておくことができる
のです。

なるほど、だから何世代も続けていくことが可能なのね。

受益者連続型信託には期間制限がある

はい、ただし一つだけ注意してもらいたい点があります。
それは、受益者連続型信託の期間制限です。

期間制限?

受益者連続型信託は世代を超えた承継先の指定が可能です。
一方で、未来永劫・無期限の指定ができるとなると、
利害関係人をいつまでも拘束してしまうというおそれもあります。
そこで信託法91条では、信託の期間を
「信託がされたときから30年を経過後に新たに受益権を取得した受益者が
死亡するまで又は当該受益権が消滅するまで」としています。

ごめんなさい、ちょっとわからないです…

そうですよね。
文章だとわかりにくいと思いますので、下図を見てください。

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つまり、
信託が始まってから30年を経過した後は受益者の交代は1度限りとなり、
その交代した受益者が亡くなると(または受益権が消滅すると)信託は終了

となります。

今回のまとめ

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複数先の世代まで財産の承継先を決めておけるのが
受益者連続型信託の大きな特徴ですが、
期間制限があることには注意が必要です!

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また、一部内容を簡略化しております。