第3回 「日常生活自立支援事業」って何?【知ってると便利な社会福祉用語】

「知ってると便利な社会福祉用語」第3回です。

知っているようで知らない社会福祉用語。
立川オフィスの社会福祉士と司法書士が、会話形式でやさしく解説します。

登場人物

社会福祉士
社会福祉士

介護福祉士や精神保健福祉士などの国家資格も所持。
自称「福祉の妖精」

司法書士
司法書士

福祉制度に興味のある若手司法書士。

第3回 「日常生活自立支援事業」って何?

司法書士
司法書士

地域の仕事をしていると、
「地権」とか「日常生活自立支援事業」って言葉を時々きくけど、
大きい声では言いにくいけど、ぼんやりとした感じでよくわからないんだよ。

どういうイメージを持っているの?

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

うーん、判断能力が低下した人が利用する、金銭管理とかしてくれる制度?
後見制度に似ている感じかな。違いはぼんやりとしかわからないけど。

あははは、当たらずとも遠からず、だね。
じゃあ、今回は日常生活自立支援事業について、

いつものように誤解を恐れず、ざっくり解説をしてみるよ!

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

そうこなくっちゃ!

日常生活自立支援事業というのは、簡単に言うと、
障害や認知症などで、判断能力の低下した人が
地域の福祉サービスを円滑に利用できるように支援する制度だよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

あれ?
じゃあ、金銭管理がメインの制度じゃないんだね。

その通り。
そこを理解していれば、この制度をより活用できるようになるよ。
日常生活自立支援事業という名前は、実は改名後のものなんだ。

創設当初は、「地域福祉権利擁護事業」という名前だった。
略して「地権」なんて呼ばれているよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

確かに、僕らのような福祉用語に詳しくない人からすれば、
難しく感じる名前な気もするね。
「権利擁護」という言葉自体は、法律用語にはないものね。

良いこと言うね。「権利擁護」ってわかるようでわからない言葉なんだよ。
意味はなんとなく分かるけど、定義を言ってみてと言われると、
ほとんどの人はしっかり言えないような気もするよね。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

確かに、そういわれると、うまく言えない気がするよ。
権利擁護って何か定義みたいのはないのかな?

うん、そうだね。この点、
平田厚さんや秋元美世さんらによる定義が僕は分かりやすいと感じているよ。
「判断能力の不十分な人々または判断能力があっても従属的な立場に置かれている

人々の立場に立って、それらの権利行使を擁護し、ニーズの実現を支援すること」
(平田厚「権利擁護と福祉実践活動」)

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

あ、なるほど、権利の行使を擁護するんだね。
「権利擁護」の輪郭がはっきりした気がするよ!

こういった、判断能力の低下している人の権利擁護をどうするか、
という課題意識を1990年代になると東京都や大阪府などが持ち始め、
権利擁護センターを自治体で創設するところも出てきたんだ。
これまで福祉サービスは行政が、誰に何をするか決め、

それを利用者は受け入れるだけだったんだけど、
2000年頃に、福祉にも契約の理念を導入して、
利用者がサービス提供事業所を自ら選べるような制度に変えたんだよ。
でも、判断能力が低下している人には、契約ができるような支援が必要になるよね。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

それで後見制度も整備されたんだよね。

うん、そうだね。
その流れの中で、契約行為の理解が難しい人は後見制度利用へ、
契約行為が理解できる人については、
日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)で対応しようという趣旨で、
全国に制度化されたんだよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほど、違いがハッキリしてきたよ!
じゃあ、そもそも後見制度と日常生活自立支援事業は、
車の両輪、相互補完的な制度なんだね。

その通り。
だから、日常生活自立支援事業で支援していたけれど、

本人の判断能力がさらに低下したような場合には、
後見制度利用へ移行することも多いんだよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

ということは、日常生活自立支援事業の利用には、
判断能力の低下ということと、
契約行為を理解できる程度の判断能力が必要ということなんだね。

その通り。
そして、そもそも権利擁護事業の主題は「福祉サービスの利用援助」なんだよ。
判断能力が低下していたとしても、福祉サービスを利用する予定のない人には、
原則としてこの日常生活自立支援事業は利用できないんだよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほど、だから金銭管理だけの利用はできません、
と言われることがあるのかー。

でも、実際は、ほとんどのケースで金銭管理をしてもらいたくて
この制度利用の相談をするんだよね。
例えば、認知症などで判断能力が低下している独居の高齢者など、

日常生活自立支援事業だと、後見制度利用に比べ本人の負担は少ないからね。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

費用はどの程度なの?

厚労省が日常生活自立支援事業の利用状況について行った調査によると、
1回の訪問で支払う金額の全国平均は、約1200円だったよ。
多くのケースでは、月に1回程度の訪問なので、
ほとんどの人は月額2000円程度の負担で済んでいると思う。
後見制度を利用すると、最低月額20000円程度は発生するからね。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

ちょっとまった。全国平均ってどういうこと?
日常生活自立支援事業の利用料は全国一律で決まってるんじゃないの???

前回も触れたけれど、社会福祉協議会は原則全国の市区町村に設置されているよね。
それらの上部機関として、それぞれの都道府県に
都道府県社会福祉協議会というのがあるんだ。
そしてそのさらに上部組織として、全国社会福祉協議会というものがあるよ。
この日常生活自立支援事業の実施主体は、「都道府県社会福祉協議会」なんだ。
実際にこの業務を提供するのは、市区町村の社会福祉協議会。
僕らの地域で言えば、実施主体は東京都社会福祉協議会。
実際に業務を提供するのは立川市社会福祉協議会、ということになるよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほど、つまり、都道府県によって、
日常生活自立支援事業の運営は違いが出てくるということなんだね。
予算はどこからでてるの?

予算は、実施主体である、都道府県の社会福祉協議会が、
国や都道府県から予算交付を受けているよ。
このような運営方式なので、日常生活自立支援事業を利用したいと思ったら、

地域の社会福祉協議会の相談窓口へ相談すると、
そのひとが契約を締結できる人かどうなのか、
ということを都道府県社会福祉協議会が審査会で判断し、
OKということになったら、利用を開始する、という流れになるんだよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほどね。段々わかってきたよ。
じゃあ、実際に日常生活自立支援事業を提供してくれる、
市区町村の社会福祉協議会では、誰がどんなことをしてくれるの?

日常生活自立支援事業は、専門員と生活支援員の2種類の職員で活動しているんだ。
専門員は、判断能力が低下している人の生活状況や困っていることなどを調べて、
どういった支援をすればよいのか計画を作るんだよ。
例えば、訪問回数とか、支援をする内容とかね。
そして、その計画をもとに、実際に訪問して支援をするのが生活支援員だよ。
地域によって違いがあるから一概には言えないけれど、
大抵は、専門員は社会福祉士などの国家資格所持者が行っていることが多いね。
生活支援員は、市民後見人の研修を終えた方など、
地域によって様々なケースがあるね。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほど、福祉の専門職が配置されていることが多いんだね。
実際の支援はどんなことをしてくれるの?

日常生活自立支援事業で行うことは大きく分けて3種類になるね。
①福祉サービスの利用援助

②金銭管理サービス
③書類等の預かりサービスだよ。
様々な福祉サービスの検討や、契約締結の支援、

公共料金や病院の料金の支払い代行や、預貯金の出し入れ、
預金通帳や権利証、実印などの預かりなどもしてくれるよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほどなあ。
費用も後見制度に比べ安く済むし、色々なことをしてくれるから、
これはみんな利用したくなるよね。

似たようなサービスで、市区町村の社会福祉協議会などが提供する
有償ヘルパーサービスなんてものもあるけれど、
たいていはお金に関することはできないので、
日常生活自立支援事業か、後見制度利用かということになってしまう。
ただ、日常生活自立支援事業には、課題もあるんだ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

どんな課題があるの?

例えば、高齢者の増加により、
日常生活自立支援事業の利用者や相談が急増しているんだ。
東京近郊のある市では、日常生活自立支援事業利用の相談をするだけでも

半年待ちの状況なんだ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

え?利用開始ではなくて、相談するだけでも半年後なの?

そうなんだよ。
地方だとさらに過酷で、予算の都合上、
日常生活自立支援事業の担当者は1名だけ、なんてところも結構ある。
一人で地域全部の利用者70人程度に訪問対応するとか、
かなり過酷な業務になっているよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

うわあ、それは厳しいね。

厚労省の制度に関する調査でも、制度の趣旨と実際の現場での対応が
異なってきていることが分かる数字が出ているんだ。
例えば、日常生活自立支援事業を利用する場合、
福祉サービスの利用を原則とすると答えた自治体は3割程度になっており、
6割近くは要件から外している、という回答になっているんだ。
従来だと、後見制度との併用を原則認めてこなかったんだけど、

最近の調査では、6割の自治体が「併用を認めている」と回答しているんだよ。

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

なるほどね。
実際のケースではなかなか割り切った支援は難しいものね。
そういった現状が、よりほかの制度との違いを分かりにくくしてるって
ことなのかもしれないね。

そうだね。
結局、日常生活自立支援事業は、地域によって運用が異なったり、
人的配置や、利用希望者の数によって、利用できるかどうかが変わってくるから、
市区町村の社会福祉協議会で、どんな対応をしているのか、
確認してみるのが一番いいと思うよ。
金銭管理をしてほしいと思っても、

その前提として、福祉サービス利用をどう位置付けるか、
そういった視点で相談していけば、社協の人達もきっと力になってくれるよ。

社会福祉士
社会福祉士

今日はたくさん話したからもう眠くなってきちゃったよ…
また次回をお楽しみに…ムニャムニャ

社会福祉士
社会福祉士
司法書士
司法書士

って、あ、もう寝ちゃった。仕方ないなあ。
でも、日常生活自立支援事業が、なぜ分かりづらいのかが、分かった気がするよ。
そしてとても大切な制度なんだということも。

制度の趣旨を理解していれば、確かに活用がしやすくなるね。
よし、今度社協へ行って日常生活自立支援事業の

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日常生活自立支援事業