認知症と成年後見制度② -利用状況-【おしえて!家族信託相談室-第3回】

成年後見制度の概況

成年後見制度の概況も少しお話しさせてください。
「成年後見を利用している人はどのぐらいいるのか」
「どのような理由で成年後見を利用することになったのか」

といった点をお伝えしたいと思います。

なおこれからご説明する図表は、最高裁判所事務総局家庭局による
「成年後見関係事件の概況-令和3年1月~12月-」のデータを引用しています。

申立て件数と利用者数

成年後見の申立ては毎年28,000人前後で推移しています。
令和3年12月の時点では、およそ18万人の方が成年後見人制度を利用しています。
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるとの推計もあり※1、
いわゆる認知症予備軍の方まで含めると、
65歳以上の3~4人に1人は認知症又はその予備軍となる可能性もあります。
したがって、今後も利用者数は増加すると考えられます。
※1「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)

5人に1人が認知症!そんなに高い割合なの?
そうなると私だってわからないし、
お父さんのことばかり心配していられないのね…。

開始原因と申立ての動機

次に後見申立ての開始原因ですが、
約3人のうち2人は認知症が原因となっています。
また申立ての動機で一番多いのは、預貯金の管理・解約
全体の3分の1を占めているのです。
なお2番目に多い「身上保護」というのは、本人の生活や療養、介護などに関するものです。
具体的には、住居の確保や施設への入退所手続、介護サービスの申込みなどです。

これを見ると、認知症で成年後見を利用した
お隣さんの例は珍しいケースというわけでもないのね。

成年後見人と本人の関係

最後に、成年後見人と本人の関係です。図表のとおり、
5人に4人は親族以外の専門家(司法書士・弁護士など)が成年後見人で、
親族が成年後見人になっているのは5人に1人です。
実は、15年ほど前までこの割合は逆でした。
5人のうち4人は親族が成年後見人だったのですが、
年々この割合が下がっていき、現在にいたります。

どうしてそんなことになったの?

「親族が成年後見人になると本人資産の私的流用など不正が行われやすいから」
という考え方が大きな理由となっているようです。

そうすると、家族の希望は聞いてもらえないの?
もしもお父さんや私が認知症になったら、娘に成年後見人になってもらいたいわ。

申立ての際に親族などの候補者を記載することはできます。
(令和3年の申立てのうち、4件に1件は親族を候補者としたものです)
ただし、誰を成年後見人にするかは裁判所の判断となるので、
記載された候補者が必ず選任されるとは限らないんです。 ※2
また、本人が一定の財産を保有している場合などは、
ほとんどのケースで専門家が成年後見人となるようです。※3

※2具体的には、本人の心身の状態・生活及び財産状況・候補者と
本人との利害関係の有無・本人の意向などの事情などが総合的に考慮されます
(民法843条1項、4項等)
※3東京の場合、500万円以上とされています

今回のまとめ

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「凍結された口座からお金を引出すために成年後見を利用する」
という話は、決して珍しいことではないんです!
次回からは、成年後見制度の注意点などをお伝えしていきます!

今回のお話は動画でもご紹介しています!
ぜひご覧ください!
(少しデータが古いですが、ご了承ください)

※本記事は掲載当時の法令等に基づき作成しております。また、一部内容を簡略化しております。