補助者受験生、初決済までの道【第15話・検査とケンタ】            ~絶対的記載事項と変態設立事項~

「ウーバーイーデ株式会社」設立のために、定款の内容を考える井出さまとUNIBEST。
前回までは、商号目的出資額所在地などを決めてきました。

もう日が暮れるのも早くなってきましたね。
残りの定款の内容も考えていきましょうか。

絶対的記載事項となるものが実はもう一つありまして、それは発行可能株式総数です。
その名の通り、会社が発行できる株式の最大数のことですね。

もっともこれは設立登記の時までに記載すればいいので、今作っている原始定款には必ずしも書く必要はありません。
商号目的と違って、書いてなくても定款認証の段階では弾かれないということです。

なるほど、ただ何事も後回しは良くないですからね。
それもここで決めちゃいますよ!
他に決めなきゃいけないことはありますか?

最低限書かなければならない絶対的記載事項は以上ですが……
他にも、もし効力を発生させたければ定款に書かなければならない変態設立事項というものがあります。

へ、へ、へ、変態だって!?!?

絶対反応すると思いましたよ……

「変態」というのは、ドイツ語から直訳してしまったがゆえの名称らしいです。
井出さまが変態というわけではありませんのでご安心ください。

なーんだ、びっくりさせないでくださいよ。

気を取り直して……変態設立事項の一つとして、現物出資というものがあります。
今回井出さまは現金200万円を出資するというお話でしたが、現金ではなく車などのモノを出資することもできるんです。

しかし、たとえば「この車には200万円分の価値があるんです!」と出資して、資本金の額も200万円と登記したとしましょう。
でも、実はその車に100万円の価値しかなかったら……?

実は会社にそこまでの財産は出資されていない……
つまりウソついて登記したってことですか!?

そういうことになります。
現物はお金と違って価値が変動しますし、このような事態になるリスクは十分にあります。

そして発起人がこれを悪用すれば、ありもしない額の財産が会社にあるように偽装することができてしまうんですよ。
それを防ぐために、現物出資をするならちゃんと定款に書かなければならないのです。

さらに原則として、裁判所が選んだ検査役による検査も必要になるんでしたよね。
もっとも200万円の車だけだったら、総額500万円以下の少額財産として検査が不要になる例外に当たりますけど。

はえ~なんだか細かく決まっているんですね。
現物出資の他にはどんな変態があるんですか?

他には財産引受発起人の報酬設立費用の負担がありますが、どれも同じように会社にとってリスクのある行為です。
そのため変態設立事項は別名「危険な約束」とも呼ばれているんです。

キケンな約束……なんだかオトナな響きでゾクゾクしてきましたよ……!

やっぱり変態じゃないですか?

必要な記載はあらかたご説明しましたし………
今日はこのあたりにしておきましょうか。

はい!今日はどうもありがとうございました!また来ますね!


~退勤後~

立川駅の北口を出てすぐ、「ケンタッキーフライドチキン 立川店」さんの「とろ~り月見チーズフィレバーガー

今日はずっと井出さまの定款の話だったな……
疲れたけど、会社法のいい復習になったぞ!

[受験生メモ]
会社法37条1項 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。